タイトルを募集します

 

予備校にいたときに描いた作品をお見せするよ。

美大の某映像学科の入試対策で書いたもの。

課題文を晒したら予備校に怒られそうなので割愛します。

簡単に言うと短い小説を挿絵と一緒に書きましょうという課題。大きな出来事が起こったりオチが面白かったりするようなエンターテイメント性はこの課題では求められていません。他に条件は色々ありますがこんな感じです。どうぞ。

 

 

 

 

 

北斗星

 

上野から乗車して850km。

気温0度、室温15度。深夜2時16分。この寝台列車北斗星」は凍てつく夜を走り続けていた。

北斗星は来年の3月に廃止されることが決まっている。男は車窓の赤いカーテンをぼんやり眺めていた。時折、老朽化の進んだ車内には踏切の振動がこだまする。書類ケースとスーツだけで乗り込んだ彼の背中は薄暗い車内にぽつんと佇んでいる。

カーテンをそっと開けると、車窓は曇っていた。男は結露した窓の水滴を指で拭った。分厚いガラスの窓からツンとした冬の冷たさが指先に伝わる。

キュ、キュ。徐々に指の端から夜の暗い闇が姿を見せる。外は都心からすでに離れ、時折ビルの影を落としているだけになった。そしてまた、長いトンネルへと入っていく。

ゴウゴウ ゴウゴウ

耳の奥で響いているような轟音がリピートされる。暗い車窓を、男はただ眺める。家庭も仕事も離れ、この北斗星に座っている瞬間こそが彼だけの時間だった。

男は幼いころに二度、祖母に連れられて札幌から上野まで旅をしたことを思い出していた。あの時とは違う一人用の個室で、固いベッドの感触を確かめる。この時間を過ごすことも最後になるだろう。

ボウッ。

トンネルを抜けた。月の光が個室を照らす。今夜は満月だ。窓からは無数の街の光が横切っていく。それはまさしく、男の記憶そのものであった。北斗星に乗っただけ、過ぎ去っていく景色があったのである。

過ぎる景色の中で、満月だけがじっと北斗星を見つめていた。大きく佇むそれは男が確かに今、ここで、この列車に揺られていることを唯一証明していた。

 

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講評

久しぶりに自分の文章を読んだ感想を…。

まずこのこれを書いた時の心情として「なんかこういう感じのが書いてみたい」みたいなのだったのは覚えててさ。それに対して満足できるものではあった。

ただ、内容の粗さでいうと結構やばくて神の視点と一人称の使い方が適切かってこととか、主人公の人間性が見えないってこととか。人間性が見えないことに関してはそういうのはそういうのでいいんだろうけど、それがこの中において成功しているかは疑問。とかね、気になる点はある。

 

それと一番気になるのは後半のトンネルを抜けてからにかけて。

正直まるっとするっと全部手直ししたい気分。「え、なに急に」といった具合に、文章で説明口調が続いてついていけない。男の記憶そのものって何?どゆこと?哲学?みたいになる。

 

あと擬音がやっぱりなんか面白く聞こえちゃうな。仕方ないんだけど、実はこの入試において擬音を入れるのは効果的という調べが出ておりまして、ゆえこのように入れております。ちょっと可笑しくても目をつむってほしい。

 

まあ全体的に言うと、劇的なオチがいらないにしてもさすがに描写ばっかりでうーんって感じかな。

ただ、作品の温度みたいなのは気に入っています。

 

更に当時は考えもしなかったことだけど、「北斗星」と「月」ってどっちも同じ宇宙に存在してるもので、さらにいうと星は自ら輝くけど月は太陽の光を受けて光る、いわば「対」なる存在だな、ということに気付いた。くそオタク特有のこじつけ理論。こういうの大好きでしょオタクは。光と影みたいな。ほら。黒バスとか履修してるオタクは分かるだろ?いやオタクの話を一旦置いて。

 

自ら光を放つ北斗星が廃車になるのに月は変わらずそこにいる。というこの構造をつめていくともっと長編?違うな、なんだろ、主人公の人物像に設定を加えて濃い作品にすることもできるんちゃうか、と。思ったわけですわ。深読みオタクの名が廃るぜ。

 

ほんで、タイトル『北斗星』にしてるけど単純すぎんか?お前は本当にオタクなのか?あえて単純にしたんか?なんからしくないぞクソオタク。

ちょっとオタクっぽくタイトルつけるなら『逃避行』だろうな。今タイトル考えてって言われると困るけど、うーん。

タイトル募集します。

 

 

今回は以上です。

セルフ講評。好評ならまたやります。……な、なんちって。